ズドォォオオオオオン
記念すべき、本日10回目の轟音が建物内を駆け巡った。
「・・・凄いなw」
軍服に身を包んだ男が妖笑を浮かべながら讃えた。
クリス「心にも無い事をw」
メイガは肩を竦めると、胸の前に球体の白光を溜め始める。
クリス「撃たせない!」
クリスは瞬時にメイガとの間合いを詰めて、氷剣で斬り付けた。
メイガ「ちっ・・・!」
―――チャージは間に合わないか・・・
メイガは”チャージ”を止め、溜めていた光を剣の防御にまわした。
氷と光が拮抗し―――振れ合い―――振動し―――
超音波のように甲高い反響音が空気に満ちた。
メイガ「流石に速いな」
クリス「褒めてくれてありがとねw ・・・退かないけどっ!」
一度剣を弾き合い、間合いを取った。
そして、同時に地を蹴り再び力をぶつけ合う。
拮抗拮抗。
まさに互角。
そんな均衡を破ったのは・・・
ただ一つのベイル。
「アイス・グリーム」
剣を打ち合わせた状態から出されたその技は、剣先から放たれる氷の礫となってメイガを襲った。
メイガ「!!」
メイガには、咄嗟に剣の形を変えられる程の余裕は無く・・・・・・
メイガに直撃。
礫とは小さな氷の塊。
氷とは水の塊。
ほんの5cm立方の氷でも、重さは約110g。
それが何百個も飛来してきたのだ。
重さは数十キロを超える。
当然、メイガは余りの痛さに体勢を崩す。
メイガ「くっ・・・」
そしてメイガは見た。
クリスが大きく振りかぶった綺麗な腕を叩きおろすのを。
その手に握られた水色の刃物が、芸術的な軌道を描きつつ光を反射しているのを。
その標的が自分の頭部であることを。
―――死ぬ。
メイガは感じた。
後で冷静に考えれば、あの時は気絶こそさせられても殺される事は無かっただろう、と判断できたのだが・・・。
生憎、冷静に考えている時間は無かった。
剣が迫っている。
当たれば死ぬ。
条件反射で・・・剣を動かし、剣先で剣を止めた。
クリス「ちっ・・・」
剣に力を加えるクリス。
メイガは全身の筋肉を総動員させて受け止める。
確かに、メイガはクリスよりも力はある。
しかし、メイガは力の作用点に剣先を使っているのに対して、クリスは剣の中央で剣を押しつぶそうとする。
てこの原理で、メイガの方が圧倒的に不利だった。
そう。確かに圧倒していた。
その刻までは。
勝てる、と思いクリスが息を吐ききった時。
メイガ「・・・・・・砕氷船って知ってるか?」
クリス「・・・・・・え?」
砕氷船。
北極や南極なんかの氷で包まれた海を航行するために考えられた船。
船首の重さで氷を砕いて、他の船が行き来しやすいようにする船の事だ。
管理人「いやー ウイキィペディアって便利だなあ」
メイガ「・・・・・・今なんか見えなかったか?」
クリス「アレを気にしてたら損するわよw」
メイガ「まあいいw ちょうど”ウチ”が戦争中の隣国、”ガルド”が北極海に面していてな、軍事使用しているらしいんだが・・・」
メイガは此処からが本題だ、と言わんばかりに薄く笑う。
クリスは聞かないふりをして、力を入れ続ける。
つれないクリスを意に介した様子も無く、にっこりと爽やかに笑った。
メイガ「その氷を割る原動力に、”レーザー光線”が検討されてるらしい♪」
クリスは思わず息を呑んだ。
ブォオオオオオン
無機質な、音。
クリスが顔を上げた時には・・・
己の氷と対峙していたのは白光煌く光剣では無く―――
赤紅に怪しく光る、ライトセーバー剣の形をしたレーザーブレードだった。
メイガ「行くぞ?」
その声のコンマ一秒後。
欠片の容赦も無く。
欠片の狂いも無く。
レーザーブレイドがクリスの氷剣に叩き込まれた。
レーザーは、的確に氷を捉えて・・・・・・。
レーザーから発せられる赤外線の刃が振動し・・・
氷剣を叩き割った。
クリス「・・・えっ」
突然目の前で起こった現実に、驚愕するクリス。
そして・・・レーザーブレイドをクリスの首に当てた。
メイガ「チェックメイト・・・と言うのは、こういう状況を指すのだろうなw」
メイガはクリスの氷剣を蹴飛ばし、クリスに囁いた。
メイガ「チェックメイトだw」